枕草子: 231-235

231
さわがしきもの
はしり火。板屋のうへにて、烏の齋の産飯くふ。十八日清水に籠りあひたる。くらうなりて、まだ火もともさぬほどに、外々より人の來集りたる。まして遠き所、他國などより家の主ののぼりたる、いと騒がし。近き程に火出で來ぬといふ、されど燃えは附かざりける。物見はてて車のかへり騒ぐほど。
232
ないがしろなるもの
女官どもの髮あげたるすがた。唐繪の革の帶のうしろ。聖僧の擧動。
233
ことばなめげなるもの
宮のめの祭文よむ人。舟こぐものども。雷鳴の陣の舎人。相撲。
234
さかしきもの
今やうの三年子。兒の祈、祓などする女ども。物の具こひ出でて、いのりの物どもつくるに、紙あまたおし重ねて、いと鈍き刀してきるさま、ひとへだに斷つべくも見えぬに、さる物の具となりにければ、おのが口をさへ引きゆがめておし、切目おほかるものどもしてかけ、竹うち切りなどして、いとかうしうしたてて、うちふるひ、祈る事どもいとさかし。かつは「何の宮のその殿の若君、いみじうおはせしを、かいのごひたるやうにやめ奉りしかば、禄多く賜はりし事、その人々召したりけれど、しるしもなかりければ、今に女をなん召す。御徳を見ること」など語るもをかし。げすの家の女あるじ。しれたるものそひしもをかし。まことに賢しき人を、をしへなどすべし。
235
上達部は
春宮大夫。左右の大將。權大納言。權中納言。宰相中將。三位の中將。東宮權大夫。侍從宰相。