81
あぢきなきもの
わざと思ひたちて宮仕に出で立ちたる人の、ものうがりてうるさげに思ひたる。人にもいはれ、むづかしき事もあれば、いかでかまかンでなんといふ言草をして、出でて親をうらめしければ、また參りなんといふよ。養子の顏にくさげなる。しぶ〳〵に思ひたる人を忍びて壻にとりて、思ふさまならずとなげく人。
82
いとほしげなきもの
人によみて取らせたる歌の褒めらるる、されどそれはよし。遠きありきする人の、つぎつぎ縁尋ねて文えんといはすれば、知りたる人の許等閑にかきて遣りたるに、なまいたはりなりと腹立ちて、返事もとらせで無徳にいひなしたる。
83
ここちよげなるもの
卯杖の祝言。神樂の人長。池の蓮の村雨にあひたる。御靈會の馬長。また御靈會の振幡。
84
とりもてるもの
傀儡のこととり。除目に第一の國得たる人。
85
御佛名のあした、地獄繪の御屏風とりわたして、宮に御覽ぜさせ奉りたまふ。いみじうゆゆしき事かぎりなし。「これ見よかし」と仰せらるれど、「更に見侍らじ」とて、ゆゆしさにうへやに隱れふしぬ。雨いたく降りて徒然なりとて、殿上人うへの御局に召して御あそびあり。道方の少納言琵琶いとめでたし。濟政の君筝の琴、行成笛、經房の中將笙の笛など、いとおもしろうひとわたり遊びて、琵琶ひきやみたるほどに、大納言殿の、「琵琶の聲はやめて物語すること遲し」といふ事を誦じ給ひしに、隱れふしたりしも起き出でて、「罪はおそろしけれど、なほ物のめでたきはえ止むまじ」とて笑はる。御聲などの勝れたるにはあらねど、折のことさらに作りいでたるやうなりしなり。



