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野分の又の日こそ、いみじう哀におぼゆれ。立蔀、透垣などのふしなみたるに、前栽ども心ぐるしげなり。大なる木ども倒れ、枝など吹き折られたるだに惜しきに、萩女郎花などのうへに、よろぼひ這ひ伏せる、いとおもはずなり。格子のつぼなどに、颯と際を殊更にしたらんやうに、こま〴〵と吹き入りたるこそ、あらかりつる風のしわざともおぼえね。いと濃き衣のうはぐもりたるに、朽葉の織物、羅などの小袿著て、まことしく清げなる人の、夜は風のさわぎにねざめつれば、久しう寐おきたるままに、鏡うち見て、母屋よりすこしゐざり出でたる、髮は風に吹きまよはされて、少しうちふくだみたるが、肩にかかりたるほど、實にめでたし。物あはれなる氣色見るほどに、十七八ばかりにやあらん、ちひさくはあらねど、わざと大人などは見えぬが、生絹の單衣のいみじうほころびたる、花もかへり、濡れなどしたる、薄色の宿直物を著て、髮は尾花のやうなるそぎすゑも、長ばかりは衣の裾にはづれて、袴のみあざやかにて、そばより見ゆる。わらはべの、若き人の根籠に吹き折られたる前栽などを取り集め起し立てなどするを、羨しげに推し量りて、つき添ひたるうしろもをかし。
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こころにくきもの
物へだてて聞くに、女房とは覺えぬ聲の、忍びやかに聞えたるに、答わかやかにして、うちそよめきて參るけはひ、物まゐる程にや、筋飯匙などのとりまぜて鳴りたる、提の柄のたふれ伏すも、耳こそとどまれ。打ちたる衣の鮮かなるに、騒しうはあらで、髮のふりやられたる。いみじうしつらひたる所の、おほとなぶらは參らで、長炭櫃に、いと多くおこしたる火の光に、御几帳の紐のいとつややかに見え、御簾の帽額のあげたる、鈎のきはやかなるもけざやかに見ゆ。よく調じたる火桶の、灰清げにおこしたる火に、よく書きたる繪の見えたる、をかし。はしのいときはやかにすぢかひたるもをかし。夜いたう更けて、人の皆寢ぬる後に、外のかたにて、殿上人など物いふに、奧に、碁石笥にいる音のあまた聞えたる、いと心にくし。簀子に火ともしたる。物へだてて聞くに、人の忍ぶるが、夜半などうち驚きて、いふ事は聞えず、男も忍びやかに笑ひたるこそ、何事ならんとをかしけれ。
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島は
浮島。八十島。たはれ島。水島。松が浦島。籬の島。豐浦の島。たと島。
189
濱は
そとの濱。吹上の濱。長濱。打出の濱。諸寄の濱。千里の濱こそ廣うおもひやらるれ。
190
浦は
生の浦。鹽竈の浦。志賀の浦。名高の浦。こりずまの浦。和歌の浦。



