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卯月の晦日に、長谷寺にまうづとて、淀の渡といふものをせしかば、船に車をかき居ゑてゆくに、菖蒲菰などの末みじかく見えしを、取らせたれば、いと長かりける。菰つみたる船のありきしこそ、いみじうをかりしかりか。高瀬の淀には、これをよみけるなンめりと見えし。三日といふに歸るに、雨のいみじう降りしかば、菖蒲かるとて、笠のいとちひさきを著て、脛いとたかき男童などのあるも、屏風の繪にいとよく似たり。
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湯は
七久里の湯。有馬の湯。玉造の湯。
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常よりもことにきこゆるもの
元三の車の音。鳥のこゑ。暁のしはぶき。物の音はさらなり。
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繪にかきておとるもの
瞿麥。さくら。山吹。物語にめでたしといひたる男女のかたち。
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かきまさりするもの
松の木。秋の野。山里。山路。鶴。鹿。



