296
「まことや、下野にくだる」といひける人に、
おもひだにかからぬ山のさせも草たれかいぶきの里は告げしぞ
297
ある女房の、遠江守の子なる人をかたらひてあるが、おなじ宮人をかたらふと聞きて恨みければ、「親などもかけて誓はせ給ふ。いみじき虚言なり、夢にだに見ずとなんいふ。いかがいふべき」といふと聞きて、
誓へきみ遠つあふみのかみかけてむげに濱名のはし見ざりきや
298
「便なき所にて人に物をいひけるに、胸のいみじうはしりける、などかくはある」といひける答に、
逢坂はむねのみつねにはしり井のみつくる人やあらんと思へば
逸24
女のうはぎは
薄色。葡萄染。萌黄。さくら。紅梅。すべて薄色の類。
299
唐衣は
あかいろ。ふぢ。夏はふたあゐ。秋は枯野。
300
裳は
大海。しびら。
逸25
汗衫は
春は躑躅、櫻。夏は青朽葉、朽葉。



